からすのパンやさん
b0020765_7565772.jpg私が1歳の頃発刊され、06年12月時点で327刷されている、かこさとし作「からすのパンやさん」という絵本があります。私は知らなかったのですが、嫁はんに言わせると大変有名な絵本らしく「小さい頃何度も読んでいた」らしいので子どもに買ってみました。

これは良いですよ。

子どもから奪い取って、私が一番はまってみています。からすの町いずみがもりの1軒のパン屋さんの話なのですが、この絵本の中には商売の基本が詰まっているんです。

■子どもが産まれたことで掃除が行き届かなかったり、パンの焼き加減が悪いと収入が減る
子どもが産まれた事とパンの品質とのリンクは、客には関係のない事です。ホスピタリティが低下すれば、全体のサービス低下ととらえられ客離れを起こします。非常に当たり前の事なのですが、つい自社の都合を客に押し付ける事をしがちです。忘れてはならないのは商品の選択権は常に客の側にあるということです。

■おやつになった焦げパンを子どもたちが買いにくる
廃棄処分品を逆転の発想で販促ツールとして利用した好例です。結果多くの初期顧客(アルファユーザー)を獲得する事が出来ました。また対価は想定内の事項に対してだけ支払われているのではありません。新聞も読まれるばかりではなく、買い物の包み紙に、ガラス細工のつや出しに、寝たきり介護時の湿気取りにと、多方面で利用されています。それまで含めての「商品」なのです。

■子どもたちの意見を聞き商品開発に生かす
つかんだ初期顧客から意見を集約し、次の商品開発の指針としています。客の要望は一見わがままですが、その中から本当のニーズを引き出すことが出来るか、「ヒト、モノ、カネがなければ出来るわけなかやんか」と言って我が道を行くかで、企業活動の未来が左右される重要な局面です。店をきれいにし、安価で、と家内制手工業のカラスですら頑張っているのです。

■多品種少量生産を徹底する
からすのパンやさんは実に70種類以上のパンを開発しました。自動車パン、のこぎりパン、だるまパンなど、見る楽しみ、選ぶ楽しみを客に与えています。実際絵本のレビューを見ても、この場面が一番好き、との意見が大半です。客は単に安価で良品質の既製品が欲しいわけではなく、自分だけの一品に出会うためにショッピングをするものです。私だったら10円高くても新聞パンを真っ先に買うでしょう。客へのカスタマイズは付加価値として価格に反映させる事が可能になります。

■商品開発に客を巻き込む
焼きたてのにおいは新製品のしるし。何も言わなくても初期顧客は反応してくれます。なぜなら自分の意見が商品開発に生かされ、社会に表現されているという、一種の共同開発者意識を持ち始めているからです。そこで初期顧客を満足させるものが出来れば、安定した収入を約束してくれる常連さん獲得です。もし出来なくても地道に客の意見を聞き、開発する姿勢を示す事で、顧客満足度は向上していきます。

■子どもを使ったクチコミプロモーション
まとまったボリュームでのムーブメントが起こると、そこにクチコミが発生します。自社でのPRと違い、消費者やメディアの自主的なPR活動には説得力があります。近年はバズマーケティングなどとよばれ、ブログを中心に商売としてクチコミを起こす手法がもてはやされていますが、商売臭さを客が感じた時点でプロモーションは失敗です。その点このパンやさんは、直接利害と無関係な子どもを使うことで、商売ベースのプロモーションと一線を画した印象を与える事に成功しています。そこへ釣られたうっかり者さんたちによって、騒ぎはますます大きくなっていきます。

■炎上をお金に換えるファシリテーション能力
ネット上ではこのような予想外の騒ぎを「炎上」と言って失敗と見なすのですが、あえて逆手に取りお金に繋げるからすのしたたかさに舌を巻きます。風車の色でパンを買う個数を決めさせ、そこに客を並べることで客に自分の立場を可視化させます。もちろん見物だけという選択肢も与えるのですが、決まりが悪いのか誰もそこには並ばないのです。そういうファシリテーション能力(組織での会議の場などで、発言を促したり、話の流れを整理したり、参加者の認識の一致を確認したりする行為で介入し 相互理解を促進し、合意形成へ導き組織を活性化(協働を促進)させる手法・技術・行為:出典wikipedia)こそが、地域に必要とされているのではないでしょうか。

■全ては家族の愛のもとに
事の始まりから終わりまで、全ては子どもが出来た事から始まった騒動でした。その困難を家族で悩み、考え、協力する事で乗り越えていった、そこの部分を外して考えるわけにはいきません。危機感を共有し、知恵を出し合い、お互いを尊重し合う、その無償の愛をお互いが持ち得るかどうか、それが企業活動を永続的に続けていけるかどうかのターニングポイントです。経営者も従業員も同じ○○屋としての視点で物事に取り組む姿勢は、家族愛同様○○愛と呼べるのではないでしょうか。

「からすのパンやさん」は別にこんな曲げた見方をしなくても、かわいい絵柄やリズム感のいい言葉など、子どもから大人まで楽しめる良書です。まだ見てない方、懐かしいと思った方は是非お手に取って見てみてください。おすすめです。
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by nekotekikaku | 2007-10-04 08:25 | @日常屋
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